一般財団法人 地域公共交通総合研究所  |  The Research Institute for Local Public Transport

一般財団法人地域公共交通総合研究所の設立にあたっての所感

加藤 博和


地域公共交通の存在が少子高齢化や地球環境問題などの観点から重要視されつつあるにもかかわらず、その運営が危機的な状況に陥っている日本においては、立て直しのために自治体・地域住民・交通事業者が当事者意識を共有し、存在意義を問い直し、三位一体で「現場」起点で改善を進める体制の確立が急務である。

その条件として、地域公共交通を収益事業として長年展開してきた交通事業者が、不採算の公益事業となった今そのノウハウや経営資源を再整備し、持続可能な地域コミュニティをつくり出す装置となりうる新たな地域公共交通の担い手に生まれ変わらなければならない。ただし現状では事業者に余力がなく、国や研究機関による支援、そして抜本的な制度改革も合わせて求められる。

地域公共交通プロジェクトは極めて泥臭く、また地域特性に大きく左右され、杓子定規では到底改革できない。その意味で、第一線の実務者と研究者が実際のフィールドで議論し、成果を直に反映させるとともに、全国スケールでの改革に向けた実践的提言の発信も視野に入れる、従来になかった「現場」起点の取組を進めようという本研究所の挑戦は極めて時宜を得た意欲的なものである。

これに参画できることにワクワクし腕が鳴る自分が、今ここにいる。




略歴 等

1970年岐阜県多治見市生まれ。
1992年名古屋大学工学部土木工学科卒業。
1997年同工学研究科博士後期課程修了(博士(工学))。
同助手を経て2001年より名古屋大学大学院環境学研究科准教授、2017年より教授。
運輸部門のCO2排出量抑制策の評価手法や、地球環境にやさしい交通体系・まちづくりのための政策を研究する傍ら、地域公共交通プロデューサーとして名古屋周辺を中心に自治体・地域住民団体や交通事業者・労働組合等と協働し「現場」での公共交通企画に携わり、講演・アドバイザー活動も行う。
国土交通省「コミュニティバス等地域住民協働型輸送サービス検討小委員会」委員として2006年改正道路運送法の方針づくりに参画。
その枠組は地域公共交通活性化・再生法に受け継がれた。
2010年より国土交通省「バス事業のあり方検討会」等の委員として、高速ツアーバスの乗合バスへの移行、貸切バス運賃・料金制度の見直しに携わり、2014年からは「『高速・貸切バスの安全・安心回復プラン』フォローアップ会議」委員を務める。
また、2013年3月から国土交通省「交通政策審議会」委員として、2014年の地域公共交通活性化再生法改正の詳細検討に携わる。
バス事業や地域公共交通の見直しに「現場」のマインドを注入するべく各地を駆け回り奮闘中。
名古屋周辺の路線バス情報に関するウェブサイト(http://orient.genv.nagoya-u.ac.jp/kato/bus/)の運営は20周年を迎えた。