緊急提言第三弾
地方生活交通の新型コロナ災害による赤字額は346億円/月で経営危機!

―4月から9月まで2076億円の損失に対する国の支援を提言―

(一財)地域公共交通総合研究所
代表理事 小嶋光信

地方生活交通事業者は、新型コロナウィルス感染拡大のなかでも地域の生活や社会的機能を守るために運行を続けなければならないという使命感を持って事業を推進している。

しかし、運行している以上、雇用調整助成金や国の多くの支援金、協力金などの救済の恩恵を享受しづらい状況にあり、全国の地方路線バス、路面電車、地方鉄道、フェリーの4つの地方生活交通事業者は4月単月で346億円の赤字に到達している可能性がある(後述<*算定根拠等について>参照)。

4月~9月までの半年間このトレンドが続くと2,076億円の巨額損失になる。そしてほとんどが従前から赤字の地方生活交通業者にとって、将来ともこの巨額赤字を埋め合わせる手立てはない。

既にこの5月に埼玉県の路線バス会社が倒産しているが、私が再建した井笠鉄道のようにある日突然バッタリという経営の危機をはらんでいる事業者の数は図りしれない。規制緩和以来、利用者の利益を中心にした法律となっているため、運輸当局でもこれらの緊急事態の場合に、その利用者の利益を守るために必要な事業者の経営実態を十分につかんでいないので、未だに的確な支援額が国として示せず十分な国や自治体の支援の輪が見えてこない。

そこで、当総研では4月7日に緊急提言を出し、地方生活交通は他産業のように需要が減ったら休業すれば良いという業態ではない特殊性を鑑みて警鐘を鳴らし、早期の支援を提言したが、社会や生活交通が使命感にて運行を維持していることから経営危機に気づかず適切な措置をとろうとする政治や国の動きは出なかったのではと危惧している。

それならば、新型コロナウィルス災害による経営危機を交通事業者自身が身体を張って訴えれば良いと思うし、私も知り合いの交通事業者に促したが、80%以上の事業者が赤字の産業で国や自治体から補助金をいただいている交通事業者としては、面と向かって危機を訴える勇気も気力も失いかけている。

国の第二次補正予算では、地方生活交通に限らず、陸も海も空も大きな打撃を受けている全ての交通産業への具体的な支援を期待している。

地方生活交通では少なくとも9月までは影響が続くとして、新型コロナウィルス感染による災害克服の支援金として、また、地方創生の面からも生活交通維持の支援金として2,076億円以上の支援が行われるように緊急に提言する。<*算定根拠等について>
赤字額は、両備グループの生活交通事業における収入の減少率を使い、それを地方路線バス、路面電車と地方鉄道、フェリー等の旅客船の国内全体に当てはめ算出したものである。

(1) 両備グループの2020年4月の収入の減少率

1)岡山地区(両備+岡電)路線バス: 49%減
2)岡山地区(岡電)路面電車: 66%減
3)*(一社)中国旅客船協会46社: 67%減

*3)の数字は(一社)中国旅客船協会が4月30日に80社を緊急調査し回答の46社の数字です。

(2) 赤字額の算定
交通モード別の収入や費用は各業界団体や国が公表した数値から当総研が算定しており、それぞれの収入や費用、損失の想定は以下の通り。

過去実績 2020年4月推定
単月収入
(2018年実績)
減少率
(両備実績)
収入 経常費用 経常損失
(億円) (%) (億円) (億円) (億円)
地方路線バス 229 ▲49 117 270 -153
路面電車+地方鉄道 93 ▲66 32 101 -69
フェリー等の旅客 202 ▲67 67 191 -124
合計 524 216 562 -346

上記の単月346億円の損失が4月~9月の6ヵ月間続くと仮定して2,076億円(346億円×6ヵ月)の損失と算定した。

(3) 両備グループの生活交通事業の直近の状況(参考)
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