一般財団法人 地域公共交通総合研究所  |  The Research Institute for Local Public Transport

中尾 正俊


我が国における公共交通機関の衰退は、昭和30~40年代に驚異的な進展を見せたモータリゼーションの発展にある。遠方のバス停また、電車の駅に行く必要もなく、いつ来るかと運行時刻を見ることもないなど、ドアーツウドアで自由に移動できる自動車は社会生活の救世主となり、一気に国民に受け入れられたことによるものである。

それを物語るように、バス、電車の利用者は昭和40年代から潮が引くように減少した結果、交通事業者は運賃収入が減少し、みるみる赤字に陥り経営から撤退せざるを得ない状況に追い込まれたのである。

生活路線の廃止は住民生活を維持するうえで大きな影響を与えた。このため、国は赤字補填と言う名目ではなく、地域公共交通の維持活性化という観点から乗車率などの指数を定め、その範囲内での補助金を出して、路線存続の維持を図って来たのである。

このことが、地域公共交通の次なる交通政策の策定や事業者の合理化や改革を遅らせた大きな要因でもある。また、平成12年の需給調整規制の廃止などの規制緩和は、ツアーバスやタクシーの増車から過当競争になり、運行事故やサービス低下を招く結果となり見直しが図られている。

このように国の交通政策と地方自治体の交通政策及び事業者の実態に合わせた総合交通政策が必要とのことからこのたび、交通政策基本法が制定された。しかし、今後この法律を生かすためには国、地方自治体、事業者、利用者との連携総合ネットワークを図る新たな組織運営が必要となって来るものと考えられる。現在も地域には「地域交通協議会」なるものがあるが、その運営実態は十分な意見が反映されているとは言えない。そのためには、これらの連携調整を図る第三者機関が必要になって来るものと思われる。

その機関こそがこのたび設立された「一般社団法人 地域公共交通総合研究所」であろう。その中立公正な組織運営は当然ながら、中小零細企業の公共交通機関と地方自治体や国との連携総合ネットワークを図りながら、真の活性化・再生化の地域交通政策は何かを提示して行く責務が課せられていると考え、またその存在意義は大きいものがある。



中尾 正俊 プロフィール

氏 名  中尾 正俊(なかお まさとし)

略歴等
出身 
1944年11月18日 広島市生まれ
学歴 
2014年 広島大学大学院 社会科学研究科 マネジメント専攻修了
資格 
2014年 都市交通政策技術者(平成26年度京都大学大学院交通政策ユニット認定)
2007年 宅地建物取引主任者(第07340170号)
2008年 小型船舶操縦者免許(第0200070170610号)
1970年 測量士(第S45-827号)

職歴等
1967年~ 広島電鉄株式会社入社(電車・技術部配属)
2003年~ 常務取締役電車カンパニープレジデント(電車運営政策全般統轄業務)
2009年~ 株式会社広電ストア取締役会長(店舗運営・労務全般統轄業務)
2011年~2013年 広島バス株式会社取締役(運行安全・危機管理全般統轄業務)
2007年~ 広島修道大学非常勤講師(2015年宇都宮LRT就任のため退任)
2011年~ 公益財団法人 鉄道技術総合研究所 鉄道技術推進センターレールアドバイザー(現在に至る)
2013年~中国運輸局地域公共交通アドバイザー(現在に至る)
2015年~宇都宮ライトレール株式会社 常務取締役運輸企画部長就任

公職・委員等
1995年~2008年 (社)日本民営鉄道協会技術委員会 副委員長
1995年~2008年 全国路面軌道連絡協議会 専務理事
1995年~2008年 (社)中国地方鉄道協会技術委員会 委員長
1996年 (社)日本鉄道車両機械技術協会 「人に優しい次世代ライトレール・
    システム開発に関する研究委員会」委員
2000年 (財)運輸政策研究機構「LRT等導入の可能性・活用方策検討委員会」委員
2003年 (財)公営交通事業協会「地方公共団体によるLRTの導入に関する
    調査研究会」委員
1997年 日本交通計画協会「路面電車活用方策調査委員会」委員
1997年 中国運輸局「広島市公共交通機関利用促進調査委員会」委員
2000年 中国運輸局「広島県地域交通策定調査委員会」専門委員
2000年 (社)中国地方総合研究所「広島都市圏グランドデザイン研究会」委員

海外LRT等視察
1989年 建設省道路局「欧州道路地下利用調査団」
1990年 (社)日本交通計画協会「欧州の都市開発とLRT導入調査団」
1998年 (社)日本交通計画協会「欧州交通調査団」
2000年 (社)日本交通計画協会「欧州路面公共交通調査団」
2003年 広島商工会議所「欧州交通・都市事情視察団」

著書・論文等
1997年 「路面電車復活の条件~人と環境に優しい公共交通機関見直しへ~」
     グローバルネット1997.6
1999年 「都市を変える軌道系交通機関―路面電車からLRTへの転換―」
     季刊「中国地方総合研究所」1999.6
2000年 「路面電車からLRT交通システムへ」『運輸と経済』2000.6,pp40-48
2003年 「路面電車のこれまでの経緯と現況」道路行政セミナー誌2003.12,pp9-16
2007年 「少子高齢化・人口減少時代に向けた地域交通事業者の取組事例」
     国土交通政策研究所2007.7,pp41-46
2012年 「広島における公共交通の社会学―路面電車と乗合バスの変容―」
     広島修道大学研究叢書2007.8,pp83-86
2013年「平成25年度広島大学大学院社会科学研究科修士論文「広島市郊外住宅団地の生活交通に関する研究―黄金山地区乗合タクシーを事例としてー」

社会活動
2007年~広島ユネスコ協会理事(2015年宇都宮LRT就任のため退任)
2008年~日本路面電車同好会名誉会員(現在に至る)

趣味
そば打ち(広島・高橋流)、ドライブ旅行、カメラ、謡曲