(一財)地域公共交通総合研究所
代表理事(理事長)小嶋光信
地方創生の喫緊の課題の一つが地域公共交通の維持・発展だ。
2000年、2002年に交通分野で行われた規制緩和によって、地域公共交通である路線バスや鉄道の30数社が倒れ、2~3割の路線が失われた。現在では地方の路線バス会社の約90%が赤字、地方の鉄道会社の75%が赤字であるばかりでなく、その中の多くが一昨年の秋に僅か19日でバス事業を廃止した井笠鉄道のように枯れ木が倒れるが如く倒産してしまう恐れが今後もある。井笠鉄道の場合は、たまたま両備グループで再生に取組んだ中国バスの路線が一部被っていて、助ける力を取り戻していたこと、両備グループの本隊が応援できる地域だったこともあり事なきを得たが、そう都合の良い地域はむしろ稀だろう。
井笠鉄道のように地方の市町村では、少子高齢化と産業の衰退等の影響もあり、もはや限界点に達している。
これらの問題点はすでに1990年代の私の研究によって明白になっていたから、
津エアポートラインでの公設民営の実証
和歌山電鐵での公有民営による再生
中国バスの再生による補助金の副作用と補助金の経営インセンティブ導入への提言
→「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」の成立へと繋がる
交通基本法→交通政策基本法の成立
民主党政権になり「国民目線」と謳うもマニュフェストに交通活性の記載はなく、地域公共交通の破綻を一層鮮明にする高速道路の無料化が推進される。
→岡山県選出の民主党の3人の議員さんに「地域公共交通を全国無料としてもたった7千億円。高速道路の無料化と比べてどちらが国民目線ですか」と訴え、交通基本法の法制化を目指した。
→自民党政権になり、経営破綻発表後、僅か19日で事業廃止した井笠鉄道の一件から緊急性が理解され、2013年11月12日に国会審議入りし、衆議院国土交通委員会で参考人として陳述、同年12月に「交通政策基本法」として法制化実現。
世界の先進国の中で、事業として成り立たない地域公共交通事業を民間任せにしていたのは日本だけだったが、「交通政策基本法」の成立で国、自治体、事業者、国民が協働して地域の公共交通を維持・発展させるスキームができた。
しかし、財源に関しては未だ、補助金政策時にプラスアルファの議論であり、残念ながら守りから攻めの地域公共交通に発展させていく力はない。
憂慮した全国市長会などが財源確保を政府に求めて行く方向にはあるが、私が2010年に提言した「エコ公共交通大国おかやま構想」のように、世界に冠たるエコでバリアフリーな情報システム化された次世代の公共交通を育て、世界の国々にバリアフリーで環境に優しい産業として「交通システム」を輸出することで、世界にも貢献でき、誇りある公共交通大国を創りあげることができると考える。
参考リンク
「エコ公共交通大国おかやま構想実現の提言」 ~世界一のエコ公共交通都市を岡山市において実現~
2014.9.22