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第3回シンポジウム

地域の足を守り、元気なまちにするには今何をすべきか?
交通政策基本法・改正地域公共交通活性化再生法施行後の現場の問題解決を考える

平成27年8月12日(水)13:30〜17:10

サマリー

交通政策基本法・改正地域公共交通活性化再生法施行後の現場の問題解決を考える

2013年12月に「交通政策基本法 」が成立し 、同法に基づく初の「 交通政策基本計画 」が 2015年2月に閣議決定されました。本計画は基本方針に「豊かな国民生活に資する使いやすい交通の実現」を掲げ、 地方自治体が主導しコンパクトシティ化等まちづくり施策と連携した地域交通ネットワークの再構築を目指しています。そのための施策として「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」等に基づき、「地域公共交通網形成計画」等を作成する自治体を国が総合的に支援する体制を構築し、それらの計画の着実な策定を促し成功例の積み上げにつなげようとしています。既に「地域公共交通網形成計画」の届出件数 は 37 件( 2015 年6月11日現在 )となっています。地方自治体と事業者および地域住民の皆さんのご理解を得て、「地域の足を守りまちを元気にする」ために何を行うべきか、ご参加の皆様と国や第一線の研究者と一緒に探究したいと思います。

プログラム

◆第一部 基調講演&話題提供(13:30〜15:15)

開会挨拶: 小嶋 光信(地域公共交通総合研究所 理事長)
基調講演: 海谷 厚志(国土交通省 総合政策局 公共交通政策部 交通計画課長)
「地域公共交通活性化再生法をめぐる状況について」(PDF資料をダウンロードできます)
話題提供: 藤原 章正(広島大学大学院教授)
「地方都市のモビリティ政策 〜ニュータウン問題を例に〜」(PDF資料をダウンロードできます)
話題提供: 加藤 博和(名古屋大学大学院 准教授)
「地域公共交通網形成計画・再編実施計画をどう策定し活用するか?」(PDF資料をダウンロードできます)
<休憩 15分>

◆第二部 パネルディスカッション(15:30〜17:10)

パネラー
山本 勝久(四日市市都市整備部 理事)
「育てよう!市民のくらしを守る公共交通〜市民・行政・事業者 三位一体で地域の公共交通を支える〜 四日市市の取り組みについて」(PDF資料をダウンロードできます)
藤原 章正
土井 勉(大阪大学コミュニケーション デザイン・センター特任教授)
「公共交通再生 やる気になれば、かなりできる」(PDF資料をダウンロードできます)
加藤 博和
磯野 省吾(地域公共交通総合研究所 研究員)
モデレーター
小嶋 光信

質疑応答

地域公共交通総合研究所第3回シンポジウム 質問への回答

質問 ①

地方では、近年全国的にも車社会の弊害と人口減による公共交通の利用者が年々減少しています。そういった背景の中で公共交通の一役を担っているバス事業者が撤退し、公共交通の維持を余儀なくされた自治体が少なくないのが現状です。人口減少が進む地域で公共交通を維持していくには、新規のバス利用者を確保、自家用自動車利用者のバス利用への転換と様々な課題があります。具体的な手法等があればアドバイスをお願いします。


回答:中国運輸局 中井交通政策部長

一言で言えば、これをやればうまくいくという王道はありません。材料は、公共交通利用者、その周りにいる利用していない住民に聞いて、どのような路線、ダイヤ、運賃、待合、接続という利用者ニーズを徹底的に聞いていくことが出発ではないかと思います。その際に一から聞いていくのも大切ですが、ICカードなどのデータを使いながら事業者の協力を得ながら進めていくと効果的です。

質問 ②

今後、地方自治体が策定する立地適正化計画の中で、駅やバス停の周辺に居住を誘導するエリア(いわゆる「串と団子」の団子の部分)を設定する際に留意すべきと考える点をご教示ください。


回答:東京大学・政策研究大学院大学 家田教授
地域公共交通総合研究所理事

この問題は相当難しい話です。故に、過大な期待をするのは間違っています。バス停、駅を作って、そこに何かを持って行こうとするのではなく、地方においては、「今、大事なところ」に確実にバスなりの公共交通が行くようにすることに尽きます。建前としての中心市街地ではなくて、本当に人が集まっているのはどこなのかを認識することが大切です。ひょっとしたら、「道の駅」かもしれません。ひょっとしてではなく、事実でしょう。イオンみたいの大きいショッピングモールがあれば、たくさんの人が集まっているところです。そここそが「拠点」です。中国地方は典型であるが、魅力的なところが“ポコポコ”あります。公共交通のユーザーは、決して住民だけではなくなってきています。一番公共交通のニーズがあるのは、足をもたない住民ですが、旅行者はそのような魅力的な場所に行くためにレンタカーを借りるか、行くのをやめるかしかありません。そこに、潜在的な需要があります。今は、ユーザーは住民だけではない時代になって来ています。そういうことを考えると自ずと「拠点」とはどこかは分かってきます。

質問 ③

公共交通の利便性が高いエリアに住んでいる人、または、今後そこへ移り住もうとする人に対して、公共交通事業者が何らかのインセンティブを与えるような新しい取組のアイデアや事例があれば、ご教示ください。


回答:名古屋大学大学院 加藤准教授

自治体から移住者・移住希望者への直接のインセンティブ付与は考えられますが、公共交通事業者からというのは考えにくいのではないでしょうか。間接的な方法としては、ICカードでのマイレージによってよく利用される方を優遇するとともに、公共交通利便性の高いエリアの店舗等と組んで公共交通来訪者割引をやるなど、公共交通を使うことで「お得」なことがありますよということを様々行っていくことが考えられます。これによって、その地域のグレードが上がっていくということではないでしょうか。

質問 ④

マイカーに依存している岡山においては、公共交通利用を促すため、パーク&ライドの取組がとても重要であると思われるが、パーク&ライド※に関する新しい取組のアイデアや事例があれば、ご教示ください。
(※パーク&ライド=パーク&バスライド、パーク&レールライド)


回答:広島大学大学院 藤原教授

いろいろありますが、パーク&ライドだけではなくて、駐車場と駅が近いということではなく、何か魅力がないと使わないでしょう。例えば、スーパーマーケットの駐車場を利用すれば、帰りはお買い物して帰れるとかいい例です。小さな拠点に近い発想ですが、パーク&ライドをすることに加え、何か魅力があるところを使うという適地を選定する考え方がひとつのアイデアです。 これは理想に近い発想ですが、パーク&ライドには二つのコストがかかっています。自動車の駐車をするというコストと公共交通に乗るという二つのコストが別々にかかっています。コストは自動車でも、公共交通でも共通であるということにするべきです。共通運賃制度をとらないと難しいなど運賃制度と地域的な問題があります。

質問 ⑤

従来、地域交通は行政と交通事業者だけで計画し運営されてきたが、本来、そこに住む住民、利用者が自分たちの問題として交通計画や運営に関わることで、継続可能な事業になると考える。パネラーの皆さんは、このことをどのようにお考えでしょうか?


回答:大阪大学 土井特任教授

地域住民や利用者が自分たちの問題だとして交通に関わることが重要だというご指摘は、その通りだと思います。その際に、公共交通において「安全」と「接遇」は当然として、次の6つのサービスがあることを共有することが大切です。6つのサービスとは①路線・系統、②ダイヤ、③運賃、④車両、⑤バス停・駅・乗換、⑥情報提供、です。これらを地域の人たちと関わることで充実したものとすることが望まれます。では、それをどうやって作るのか?これが、地域の人たちによる自発的な「まちづくり」を進めるということです。
まちづくりを進めるためには、次の3つの技術が重要です。
1.「場」を作ること
2.ワークショップなど「意見」を自由に出し合うこと
3.出てきた意見の中で、どんなに小さいことでもいいから実現させること
「場」を作る際に、事業者さん等は理不尽な要求がでてくることを怖がって参加してこない場合(参加しても、議論の場から離れオブザーバーのような参加)があります。でも、多くの場合は、そのようなことは1,2回だけです。事業者さんから、例えば「かしこいチケットの使い方」などを参加者にアドバイスなどすれば、一気に「信頼感」が高まります。事業者さんも行政担当者もビビらずに議論の中に参加してほしいのです。そのことを通じて、お互いに普通に話し合える関係ができます。はじめは、太秦(京都)の時も、文句ばかり言われたら…と事業者の方は心配されて議論の輪の中に入らず、オブザーバーのような参加でした。しかし、それでは顔が見える意見交換ができません。もし、理不尽な要求などが出て来た時は私が、間に立つ役目をします、ということにしました。そういう役割の人(第三者的な役割)も必要です。現在は、住民も事業者や行政も同じ方向を向くことができ、利用者の拡大につながっています。要は、公共交通は住民のために動かしているものです。当然ですが自分たちのものとして思ってもらうことが持続可能なものとするためには大切です。

質問 ⑥

くらしの足(地域公共交通網)を組み上げるための実務はどのようにスタートし、どのように進めるのでしょうか。「言いだしっぺ」は市区町村の首長か、議会か? 事業者、住民側から言い出すにはどうすれば良いのか?具体的に、住民と行政や交通事業者はどう協働していくのか?


回答:四日市市 都市整備部 山本理事

住民側から言い出すのが最もいいと思います。首長、議会も市民がいいだしたことはきいてくれます。「熱意ある対応」をしてくれれば、必ず動きます。

質問 ⑦

地域をまたがる交通問題の調整に都道府県がきちんと関わる制度になっているのでしょうか?

質問 ⑧

法改正に伴い、策定主体が市町村から地方公共団体等にあえて変わりましたが、地域に密着したものは、やはり市町村が主体的に行うのがスムーズに物事が運ぶように思うのですが、都道府県に期待される部分、またやるべき事とは、何だとお考えですか?

質問 ⑨

岡山県内で地域公共交通網形成計画を作成する意向を表明しているのは、6市町村あると聞いていますが、まずは、何から手がけたのか代表的な成功事例等あれば今後の参考にさせていただきたいのですが?


⑦〜⑨ 回答:中国運輸局 中井交通政策部長

従前から都道府県もやる気のあるところは交通政策に積極的に関わっていました。
今回の法改正により、計画策定主体は市町村に加え、制度的に県も役割を担うこととなりました。鉄道を含めるなど広域にわたるネットワークを再編していく場合には、県が乗り出してもらう方がスムーズにいくケースが考えられます。
また、市町村に「やる気」はあるが、ノウハウがないなどの場合には、県にも入ってもらった方が良いでしょう。兵庫県、京都府、佐賀県などは、一緒にやってもらっています。
何から手掛けるかは、一言でいうならば、首長や幹部、担当者の「やる気」です。危機意識、問題意識をもつことが大切です。もう一つは事業者や運輸局等となんでも相談できるようなネットワークができていることが大切です。その中でも最も大切なのが、どういう交通ネットワークを形成すべきかを考えて、関係者同士で共有することです。

質問 ⑩

交通における「地方」とはどんな単位でどんな組織で語られるべきでしょうか?現在、交通政策は国や地方自治体などの単位でデザインされ検討されている事と思います。しかし、私は周囲と現環境に調和してこそ有機的に最適化される「交通システム」が100年以上前に原形ができた現行政区を単位としてデザインされる事に少し違和を感じました。そこで、もし有識者の皆様が全くの自由に交通政策に関する対象エリアと検討組織体系を決められるとしたらどんな風にするのが理想なのか?というお考えについてご意見をお願いします。


回答:東京大学・政策研究大学院大学 家田教授
地域公共交通総合研究所理事

100年前と今とは全く変わっています。平成の大合併で大幅に自治体の数は減っています。東日本大震災の復興に関して東北の被災地をいろいろと手伝っていますが、一つ一つの自治体の規模があまりにも小さいと感じています。 何がこの50年で地域にとって代わったかといえば、「道路」です。各段に道路のクオリティーが良くなっています。今は、快適に、短時間で、広いエリアを移動できるようになって来ているわけで、基礎自治体の大きさと実際に人が動きたいと思っている感覚とは、無関係になっています。実際の基礎自治体がどうしたこうしたと考えているエリアとの大きさが全く整合していません。ローカルなレベルのバス停の位置や路線などは自治体でやればよいが、もっと大きな意味でのルートは、今の基礎自治体では小さすぎて近隣自治体と相談しないとならないでしょう。三陸では気仙沼線がBRT化されていずれ高速道路を使って来ることができるようになります。そうなると、自治体の規模はローカル、中規模、そして運輸局レベルの大きさで、仮想的な地方を考えていかないと、実は公共交通はうまくいかないでしょう。 「やる気」という話がありましたが、どの自治体の職員も忙しく、目の前にある仕事の前では、「やらないというわけではない」と思っています。今の体制は、暫定的にはしょうがないが、本当に良くするには、まだ不合理な体制であると思います。改善の余地は大いにあると思います。

質問 ⑪

自動車の高齢者の運転免許規制について、超高齢社会の中、特に地方在住者にとって自動車は生活必需品ですが、同時に高齢による事故リスクも無視はできないかと思います。高齢者の運転免許についてのあり方を有識者の方にお尋ねしたく思います。また自動車に頼らない高齢者生活の研究例などあればご紹介頂きたくお願い申し上げます。

質問 ⑫

過疎地において、公共交通を確保すると共に、過疎地の活性化を図るために客荷恊働輸送を推進できないでしょうか?過疎地有償輸送やコミュニティバスが宅急便や郵便を運ぶ恊働配送を行う事で、配送ネットワークの維持にも役立つと考えられます。長らく検討を頂いておりますが、まずは試すというアプローチで複数の過疎地でさまざまな方法を試し、機能する方法を試行する事を推進できないものでしょうか?


⑪〜 ⑫ 回答:東京大学大学院 鎌田教授

自動車運転は、認知・判断・操作の繰り返し動作と言われています。加齢による能力が低下は、人により様々ですが、徐々に進行していきますし、一方認知症により急激に能力低下することも知られています。警察庁では免許更新時に高齢者講習をやっています。最近は、さらに講習予備検査と称する認知機能検査もやるようになりました。その結果によっては、認知能力が低下した人には、免許更新を認めず、運転を断念してもらうことになります。今までは、第一分類に入っても過去に違反、事故歴がなければ更新できていました。道交法改正により、一定の違反等があれば、臨時の認知機能検査が義務付けられ、第一分類に入ったら医師の診断により認知症と判断されれば免許取り消しになるようになります。一方、それにより自立した生活ができなくなる人が多くなると予想され、公共交通等の受け皿がないと大変なことになるでしょう。免許を返上すると60km/hの自動車の世界から、シニアカーと呼ばれるハンドル形電動車いすの6km/hの世界に一気に入ってしまうので免許にしがみつくことになります。こういった背景の下、全国36の知事で構成される、高齢者にやさしい自動車開発の検討がなされ、二人乗りの超小型車の必要性がうたわれました。免許は必要ですが30km/h程度の超小型車が高齢者の足として活用されることが期待されます。国交省では、軽自動車の緩和という形で、超小型モビリティの認定制度を設けました。各地で実証実験が行われていますが、軽自動車の緩和措置なので使いづらいという声もあります。時速30km/hであれば原付ミニカーも含め、超小型電気自動車がありますが、さらにその下の10-15km/h位の自転車と同じくらいの電動車両が必要なように思っています。この種の車両は、海外では免許がなくてものれますケースがありますが、日本ではダメということで、その辺の規制緩和をどうするかが今後の課題です。「免許制度」と「道路空間での混合交通をどう成立させるか」など総合的に考えていく必要があります。自動車に頼らない、高齢者生活の研究例は、国土交通省が言っているコンパクト+ネットワークがうまく行けば実現できるかもしれませんが、まだまだそうしたところには達していません。 貨客混載については、内閣府の規制緩和および国土交通省の「豊かな未来社会に向けた自動車行政の新たな展開に関する小委員会」で議論がなされています。バスやタクシーで少量貨物を運ぶことは前から認められています。今年に入って、岩手県北バスで、貨物も運べる専用車両を作ったとして、大きく取り上げられていますが、岩手では20年くらい前からバスで荷物を運ぶケースの実績があります。これから考えなければならないのは、逆に、トラックで人を運べないかというものです。これは、車両、免許の問題でハードルは高いものですが、国交省自動車局では、地域のニーズがあれば、実証実験はすぐやりたいということで、手を上げるところを待っている状況です。実証実験をやって、どういった法改正をやり、規制緩和をすればいいかを検証していきたいところです。適当なところがあれば国土交通省自動車局総務課企画室の方へ手を上げたいと言ってみたら良いと思います。

質問 ⑬

地域の公共交通を活性化する際、鉄道・バス・コミュニティバスなどのモード間が連携しクルマの利便性をキャッチアップしなければならないと考えます。また、過疎地ではさらに客荷恊働輸送などで公共交通を維持する必要性も福祉の観点で必要です。しかし、現在の法規制や助成制度はモード毎の縦割りとなっており、モード間の連携を高めるために協議をする際には独禁法の縛りも入り、調整には大変な苦労が伴います。一方、利用者視点で見れば、バスや鉄道などのモードの違いは関係無く、地域内移動、都市内移動、都市間移動などの移動ニーズに応じた公共交通のネットワークが欲しいだけです。1時間に1本しか走らない地域鉄道と新幹線を同じ法規制で括るのも変ですし、お客様が毎日乗り換える鉄道とバスで別々の制度が適用されるのも変な事です。利用実態と制度がズレているので、公共交通がクルマに対峙して機能しづらく、弱体化しているように思えます。地域交通という括りで鉄道とバスを統括する。都市交通という括りで地下鉄・バス・LRTを統括するといった利用者視点の法体制や制度にならないものでしょうか?また、すでに競争状態ではなくシビルミニマムとなっている地域の公共交通を独禁法で縛るのも変な事ですので、ガイドラインだけでなく法改正を働きかけていただけないものでしょうか?


回答:東京大学・政策研究大学院大学 家田教授
地域公共交通総合研究所理事

モード間の連携や連動は極めて重要です。一方、技術システムとしての特性は、モードによりかなり異なっており、安全監理・技術監理などの面から見ると官庁の行政システムが縦割りになっているのはそれなりに合理性があります。 ところが、ことサービスとなるとより統合的な扱いが必要です。そのためには、今回の法改正もそういう方向性を持ったものです。モード間の統合性・連携性を高めるには、ユーザーが声を上げること、サービス向上に向けて貢献することが不可欠です。 もう一点、地域公共交通は常にマイカーなどと対抗関係にありますから、「独禁法的発想に立った」事業監督の法制度、法理念はまさにオールドファッションです。世界の潮流としては、昔ながらの「competition in the market」の発想から、一定期間の“独占的営業権”を認める公設(公有)民営方式を支える「competition for the market」の理念へと既に切り替えられていることを申し添えます。

シンポジウム会場での未回答質問に対する回答

質問 ①

地方創生が言われていますが、国は地方の公共交通体系の確立に向けて財政支援をするつもりがあるのでしょうか?もしあるとしたらどの程度の財政規模で、どのような条件が地方自治体に求められるのでしょうか?

回答:国土交通省 総合政策局 公共交通政策部

 地域公共交通に関する財政支援としては、地域公共交通確保維持改善事業(平成年度:290億円)だけでなく、幹線鉄道等活性化事業(平成27年度:15.6億円の内数)、社会資本整備総合交付金事業(都市・地域交通戦略推進事業)(平成27年度:9018億円の内数)、今年度より創設された(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構による出資等の制度(平成27年度:10億円)などのほか、内閣府において「コンパクト化と公共交通ネットワークの形成等」といった地方創生の深化に向けた先駆的な取組を支援するため、平成28年度予算概算要求において、「地方創生の深化のための新型交付金」(平成28年度概算要求額:1080億円)の創設を要求しているなど、様々な支援メニューが用意されております。  このような幅広い支援策の活用に当たっては、地方公共団体が重要な役割を担っているものと考えており、事業者だけでなく、地方公共団体に対しても情報提供を密にしたいと考えております。事業者におかれましても、地方公共団体と連携して、このような支援策の活用をご検討頂ければと存じます。
【注】
地域公共交通確保維持改善事業(総合政策局)
地方バス路線、離島航路・航空路などの生活交通の確保・維持を図るとともに、ノンステップバス等の導入や地域鉄道の安全性向上に資する設備の整備などの快適で安全な公共交通の構築に受けた取組を支援。
http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/sosei_transport_tk_000041.html
社会資本整備総合交付金事業(都市・地域交通戦略推進事業)(都市局)
自由通路、地下街、駐車場等の公共的空間や公共交通などからなる都市の交通システムをパッケージ施策として総合的に支援。
幹線鉄道等活性化事業費補助(形成計画事業)(鉄道局)
潜在的な鉄道利用ニーズが大きい地方都市やその近郊の路線等について、地域公共交通活性化・再生法に基づく地域公共交通網形成計画の枠組みを活用して、地域鉄道の利用促進や地域の活性化を図るべく、鉄道の利便性向上のための施設整備に対し支援。
(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構が出資等を行う制度(総合政策局)
LRT・BRTの整備運行、バス路線の再編等の地域公共交通ネットワークの再構築を担う新設事業運営会社に対して出資等を実施。

質問 ②

民間の路線バスに対する赤字補填方式の課題とその打開策について教えてください。


回答:名古屋大学大学院 加藤准教授

最も一般的なのは、標準運送原価を決め、収入で不足する部分を補填するというものですが、これですと事業者が利用者や収入を増やす取組を行うインセンティブがないことが弊害となっています。また、補助対象とする原価要素を狭くとると、事業者は赤字運営を迫られることになり、退出を促進してしまう恐れがあります。そこで、指定管理者選定のように補助額をあらかじめ決めてしまう方法(国の地域公共交通確保維持改善事業でも行われていますが)や、利用や収入が多い場合には事業者への補助を増額するといった方法が考えられています。様々な問題があって十分に実施できていませんが、少なくとも単純な赤字補填にはならないような工夫が必要と思います。加えて、補助事業については各自治体の地域公共交通会議や法定協議会での評価改善(PDCA)プロセスが必須だと考えます。地域公共交通確保維持改善事業ではPDCAの考え方が取り入れられていますが、手続き的なものになっている傾向が見られます。各会議体で咀嚼して、年間予定の中でどのように評価改善を行っていくかをきちんと決めて実施していくことが必要です。

質問 ③

予約制のデマンドバスの利点と問題点について教えてください。


回答:大阪大学 土井特任教授

デマンド型交通の利点は路線バスでは需要量が少なく路線の維持確保できない地域において、事前予約することで空車を走らせることなく、少ない費用で運行できる場合があることだと思います。時として過疎地などにおける公共交通の切り札と考えられる場合があります。 一方、問題点も多くあります。 利用者から見ると事前予約などは結構面倒なことだと思います。 しかし、もっと重要なことは行政側で生じる問題です。 利用者が増加すればコストが嵩むことになります。安価な公共交通ではなくなります。 また、ドアツードア型のサービスに近づくと行政が補助金を出して運賃を安くしているタクシーのようなものになる場合があります。これだと、タクシーやバスの利用者からデマンド型交通への転換が進む恐れがあります。するとタクシーやバス事業を毀損することにもなります。 従って、デマンド型交通の利用者が増えた場合には、バスの導入に変えることなども計画段階から考慮して導入することが望まれます。 デマンド交通を検討する際には、利用範囲や利用者を限定するなど既存のタクシーやバスとの役割の分担を十分に考え、問題点を抑えて利点を活かすための工夫が不可欠です。

質問 ④

住民がワゴン車などを走らせる非営利団体NPO方式の利点と問題点について教えてください。


回答:名古屋大学大学院 加藤准教授

住民が地域の足を確保する取組に参画すること自体は推奨しますが、車両や運転手を用意して運行を直接担うのは最終手段と考えていただきたいと思います。道路運送法でも、有償運送については国の許可を得たバス・タクシー事業者が行うことを大原則としており、それが困難な場合のみ自家用有償運送を認めております。安全・安心な輸送を確実に続けていくためにはそれなりの体制が必要であり、ボランティアでできる範囲は限られています。また、いったん立ち上がっても、長期にわたって継続していくのは大変であることが従来の事例からうかがえます。  したがって、住民が自ら地域の足を確保する取組を行う場合には、近隣のバス・タクシー事業者、および自治体と十分相談しながら、まずは事業者による運行ができるかどうかを検討していただきたいと思います。その上で、困難な場合については、市町村自家用有償運送とし、その運転等を地域で受託する方法や、地域でNPO等を立ち上げて自ら公共交通空白地有償運送(4月に過疎地有償運送から名称変更)を行うことを検討することになります。大切なのは、住民・地域にとってどんな運送サービスが必要かであって、とにかく走らせるとか、住民自ら運営することに意義があるなどといった考えは持ってはいけません。 もちろん、住民自らが参画することで、そのニーズに合った運行が行われる可能性は増しますが、一方でみんなの意見をきいたことで路線が散漫になってしまうなど非効率で利用が少ないサービスになることもあります。また、自治体全体の公共交通網との整合をとることも重要です。専門知識を持った方に入っていただくことを勧めます。

質問 ⑤

既存の路線バスがある場合、そのバスと小型のコミュニティバス(ワンコイン)の複合型が理想ではないかと考えています。公設準民間委託型で、住民の利便性を増すとともに、自治体への財政負担を低く抑えることが可能ではないかと思います。自治体によって条件は違うと思いますが、このパターンについて何かアドバイスをいただけないでしょうか?


回答:広島大学大学院 藤原教授

サービスに必要な機能と利用者の能力を勘案して、路線バスとコミュニティバスを組み合わせるのは合理的と考えます。一般に両者には運行頻度に大きな差がありますので、乗り継ぎ時間や乗り継ぎ運賃などの抵抗を緩和する策が重要となるでしょう。乗り継ぎ結節点を店舗等に配置し、乗り継ぎ時間を有効に活用できる、あるいは休憩できる工夫をしているところもあるようです。

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