新型コロナウィルス影響下での
地方生活交通維持に向けた緊急対策提言
代表理事 小嶋光信(両備グループ代表)
地方における暮らしや社会的機能維持のために生活交通維持は必要不可欠ですが、鉄軌道、路線バス、フェリーなどの生活交通は、今回の新型コロナウィルスによる影響で少なくとも2割、深刻な場合で6割の減収となり今後の経営維持に深刻な影響が出ています。
例えば、両備グループでも鉄軌道、路線バス、フェリーの生活交通を提供していますが、このままの状況が今年9月まで続くとあらゆる対策を講じても4月-9月の半年で生活交通事業は前年比16億円の減収で収入28億円、経常損失12億円に転落します。津エアポートラインのように空港への海上アクセス路線は何と9割の減収です。
生活交通が他産業と違うのは、暮らしや社会的機能維持のためにどのような状況においても、できうる限りの路線維持の必要があり、減収になっても大きな減便休止等の策を打ちにくいことです。即ち、国が打ち出した経済対策の中で特に雇用調整は殆ど使えない状態で生活交通事業者への救済策が極めて乏しい状況にあります。
従って、新型コロナウィルス影響下での地方生活交通維持に向けて6つの緊急対策を提言いたします。
1. 新型コロナウィルス対策地方生活交通維持特別補助金(減収補助)の新設
2. 燃料税、消費税、固定資産税等の税の減免
3. 地方自治体などの公共交通補助に新型コロナウィルス対策特別交付金の新設と地域間交通維持・確保に向けた補助金要件の緩和
4. 地方自治体などのバスターミナル、駐車場、港費や港湾施設使用料などの使用料の減免
5. 従業員やお客様の感染症予防対策の導入・実施の補助に加え、従業員に感染者が確認された場合の優先的医療的措置の政府保証の政策パッケージの投入
6. 風評被害対策の実施
そもそも新型コロナウィルスの影響とは関係なく、従前より地方交通事業者は8割以上が赤字経営であり、残り僅かな黒字事業者も、抱える路線の8割が赤字の構造で地方交通を維持するには虚弱な経営体質のため、収入額の4割程度に相当する経常損失を持ちこたえるのは極めて困難です。自動車大国のアメリカでは公共交通維持に250億ドルの緊急支援が既に実行されていますのでご参考までに紹介させていただきます。
政策パッケージのポイントは4つ。
●250億ドルをばらまく。使い道は各州の判断で地域事情を考慮した使い方をしてよい。
●州が独自に展開する公共交通支援策に対して連邦政府からの資金拠出を手厚くする(例:通常50%補助→これを80%補助まで引き上げる)
●既に出している公共交通向けの補助金の対象期間を30日延長する
●緊急事態が宣言された州では公共交通規制要件を大胆に緩和し
emergency relief docket(規制緩和一覧)として直ちに公表する
(https://www.transportation.gov/briefing-room/us-transportation-secretary-elaine-l-chao-announces-25-billion-help-nations-public U.S. Department of Transportationサイトより)
日本とは規模・質・スピード感に格段の差があり、緊急事態の政策遂行の仕組みに大きな課題があります。