新春フォーラム2025「持続可能な交通まちづくり」
― ヨーロッパ型の公設民営で鉄道やバス事業の経営黒字化 ―
(一財)地域公共交通総合研究所
代表理事 小嶋光信
皆さん、あけましておめでとうございます!
新春フォーラム2025にご参加いただき有難うございます。今日(1月8日)のフォーラムは「持続可能な交通まちづくり―欧州の実践に学ぶ」と題して、宇都宮さんと柴山さんが共著で出版された本の発売を記念してディスカッションをしていただきます。
日本は今までは移動をどうするか、赤字の公共交通をどうするかの議論が主ですが、ヨーロッパでは本質的にまちづくりに役に立つQOLに良い交通は何か、どのように交通をウォーカブルなまちづくりに活かしていくかを著者のお二人と3名の有識者で具体例から語り合っていただこうということで開催しました。きっと公共交通に携わる行政や交通事業者の皆さんの今後の執務にお役に立つと思います。
今日はグッドニュースが3つあります。
1.近江鉄道が半期で31年ぶりに95百万円の黒字化…上下分離で準公設民営化の有効性を実証
赤字補填の補助金で支えられたビジネスモデルから、健全な経営としてヨーロッパ型の公設民営・公設民託へのビジネスモデルの転換を和歌山電鐵で実証し、公有民営制度ができ、地方鉄道がこの方式で再建されていますが、地域公共交通総合研究所でお手伝いし、昨年4月に上下分離で準公設民営化された近江鉄道株式会社が半期で31年ぶりの黒字95百万円となり、一昨年の旧ビジネスモデルでは2億円の赤字から黒字企業へと転換しました。見違えるほど経営の意識改革が進み、積極的に地域密着した新しい利用促進が地域と連携されて始まりました。
企業は黒字化しなければ経営者のやる気も社員の待遇改善も積極投資で利用者の利益にも街づくりにも貢献できないことがこの近江鉄道の経営方式の転換で如実に証明されました。
2.岡山市でバス路線の支線での公設民営が今春開設
これまでバス部門では、なかなか公設民営化が進みませんでした。
井笠鉄道というバス会社は、すべての路線が収支率50%以下で、補助金で支えられていましたが、2012年11月に経営破綻を発表してわずか19日で倒れて大きなニュースとなりましたが、私が公設民託の手法で井笠バスカンパニーとして再建し、コロナ禍においてもわずかながらでも黒字で乗り切ることができたことで地域公共交通を維持していく路線バス事業の再建モデルとして大変に有効であることが実証できました。
しかしバスは違う、それほど投資額も大きくないし、補助金制度で良いのではという意見も多く、バス分野の公設民営はその後もあまり進みませんでした。
公設民営・公設民託は、経営努力で地域公共交通が黒字化するビジネスモデルなのです。
路線バスは赤字でも、補助金で支えて他方で高速バスや観光バスとの合わせ技で黒字化するビジネスモデルも限界に来ています。
現状は補助金制度から抜け切れず如何に補助金をもらうかという経営努力から、前向きに如何に乗っていただくか、地域とともに発展するかという視点から経営努力をすれば黒字化するというビジネスモデルへの早急な転換が必要なのです。
日本ではもう30年以上、万年赤字から脱却できない運行への補助金に頼った経営から、思い切った公設民営・公設民託にバス部門も転換することが国も自治体も交通事業者も急務です。短期的な補助金の赤字支援は必要ですが、中長期的には補助金に頼るより民営の経営努力で財源が長期的に節減されることは中国バスや井笠バスカンパニーの黒字化(再建)で実証済みです。
今年は全国初ともいえる岡山市の地域公共交通計画の路線再編で路線バスの支線が新設されます。
まちづくりにお役に立つ公共交通と言っても赤字企業では何の投資もできませんし、賃金も上がらず社員も集まらず、経営意欲もわきません。補助金を増やしてください、増やしてくださいと言うばかりであまり経営努力をしない交通事業者に行政は温かい目を向けてはくれません。ここでやっとバス事業も公設民営「元年」に入ると思います。
3.和歌山電鐵に三毛猫のカギ尻尾の福猫「ごたま“ふく”駅長」が登場
この1月7日には和歌山電鐵に新しい猫駅長が誕生しました。何と幸せを呼ぶ「カギ尻尾」の三毛猫「ごたま」が“ふく”駅長として就任し、これから公共交通にきっと福をもたらしてくれるものと期待しています。
皆さんと一緒に進めている地域公共交通の基盤整備も、今年こそ大きく転換し、「運送法」を親法の交通政策基本法に則って一部改正する時期に来たと思います。「最適な需給」で健全経営する交通事業モデルで、利用者の利益として安全・安心の交通事業となるように法整備と安定した財源の確立で進めていかなくてはならない時期になっています。
今日はお忙しい中でのご出席、ご視聴ありがとうございます。このフォームが公共交通の新しい展開に少しでもお役に立てれば幸いです。