2024年問題に関連した運転手不足についての アンケート調査結果と提言

一般財団法人 地域公共交通総合研究所
代表理事 小嶋光信

3年ものコロナ禍の人流制限で、赤字体質の地域公共交通は経営的に甚大な被害を受け、現在は回復途上にあるが、回復してもコロナ禍前の1~2割の減収が予想される上に運転手不足という深刻な問題が業界を襲い、路線維持や便数確保が難しくなってきている。

ここに2024年4月より働き方改革関連法の施行に伴う労働時間に関する制度変更が予定されている。この運転手不足が深刻な時に加え2024年問題の対応から全国で路線廃止や減便が相次いでいるが、この現状を業界へのアンケート調査によってできるだけ正確に把握・分析し、どのような影響があるか、また如何なる対応をすべきかを提言する。

1. アンケート調査概要・結果

<調査期間>
令和5年11月6日~11月24日
<調査対象と発送数>
公益社団法人日本バス協会 会員名簿(令和元年9月):308社 回収率22%(68件)

1)全仕業に対して、99%が運転手不足と回答
2)運転手不足への対策として回答事業者の半数が「減便」、約3割が「路線廃止」を計画
3)車両運転業務の時間外労働時間上限規制並びに改善基準告知の改正(20244月適用)は、「延期すべき」とする回答と、「延期すべきでない」との回答がともに4割でほぼ同率
公益社団法人岡山県バス協会による調査結果からは、延期すべき理由として、運転手不足への各社の解決策が見えていない現状と、将来改善の見通しが立たない不安が窺える。
延期すべきでない理由としては、労働環境整備の趣旨を理解すれば20244月からの施行が妥当、また延期しても運転手不足は解消しない実態が見受けられる。
4)適用の延期期間としては、4年以上が最多で16%、無回答が56%

2.2024年問題への対応への提言

車両運転業務の時間外上限規制と改善基準告知の改正は必要な改革だが、下記の事由から、対応できない事業者には一定の条件を付して例外規定を設け、少なくとも3年程度の延長が必要と言える。

1)2019年から5年間移行期間があったが、この期間中に3年ものコロナ禍があり、十分な対応ができなかった。少なくとも、コロナ禍で失った3年間は再延長すべきと言える
2)加えてコロナ禍後に全国的な運転職不足が強まり、減便や路線廃止の懸念があり、公共交通が負のスパイラルや地方交通の崩壊が地域の崩壊へとつながる恐れがあること
3)現状は生産性なき時間外規制となり、月2〜3万円の時間外手当の減少によって、ますます運転職からの離職が増える懸念があること
4)企業だけでなく、この減収対策に対する国と自治体の支援が必要
5)生活交通の例外規定延長は、下記の条件を付して認める
①本人の承諾
②労働組合など社員代表の承諾
③自治体や地域協議会などとの実態の共有
6)今後も運転職不足は避けられず、3年間で下記の問題解決を図る必要がある
①運転職への他産業並みの待遇改善

自治体等との有償輸送を活用し、公設民託での大型一種免許保有者などの雇用によって少しでも運転手不足を補う
運転職への外国人労働者の雇用に対する国の許可
「働き方改革+働きたい改革への転換」が必要

年収の壁を100万円から200万円に上げれば、パート労働は1,400万人増加したのと同じ効果があり、運転職では朝晩の時間外を減らせる手段となる。さらに他産業も人材不足を補えるとともに、年収の壁で働きたくても働けない人々の生活向上が図れる。

結び

利用者の利益を支える運送事業の健全な発展には、雇用の裏付けが必須で、特に公共交通は予てからの赤字体質の上に、エッセンシャルサービスと言われながらコロナ禍で十分な支援を受けられなかったツケがいっぺんに回ったと言える。
上記の待遇改善等とそれを可能にする事業構造の革新へ向けた諸対策とともに、国民生活を支えるために日夜努力している運送従事者に対して「感謝とリスペクト」する社会の構築も求められるのではないか。







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