小林 貴史

今次、アドバイザリー・ボード委員への再度の就任にあたり、前職の日本政策投資銀行時代の視座だけでなく、海事政策の観点も含め海上交通等の在り方等に着目して取り組んでいきたいと考えています。コロナ禍が続くものの、2025年大阪万博が予定されるなかでは、インバウンドの本格的な再開とともに今後の観光資源として期待が高まる瀬戸内海クルーズや海上交通(海上バス)等の議論を深める好機と思料されます。

世界的にカーボンニュートラルに向けた取り組みが加速する状況下、海運業界においてもIMO(国際海事機関)により2050年までにGHG(温室効果ガス)総排出量の50%以上削減(2008年比)という意欲的な目標が掲げられました。新造船だけでなく既存船も対象となる規制や船舶毎の年間燃費格付制度等の導入も予定されることから、私が現在属する舶用機器業界も含め斯業界全体で技術面・運航面での対策に加え革新的なソリューションを生み出し社会実装していくことが求められています。

本題である「地域公共交通」の観点では、地域社会に不可欠なインフラであり人口減少・高齢化が進む状況下、その重要性は一層増しています。一方、なかなか終息を見通せないコロナ禍のなかで、地域交通事業者の疲弊は増すばかりです。斯様な状況において、本来の在り方(地域インフラとしての公共交通が在るべき姿)と直面する課題(担い手である地域公共交通事業者への対応)への取り組みといった2軸を時系列・フェーズを切り分けた整理が求められます。これらの検討を進めるに際しては、VUCA時代の経営手法として着目される、効率的な組織運営手法としての「デザイン思考」、都度の修正と反復を前提としたスピード重視の「アジャイル型経営」、自力で駄目なら他力を仰ぎ共創を前提とする「オープンイノベーション」等は、「地域公共交通」の在り方の検討の場でも有用と考えます。

以上からも、「地域公共交通総合研究所」が担う役割への期待が増すなか、上記のスタンスで同研究所とともに、地域公共交通が有する社会的課題の解決に貢献していきたく考えています。

小林 貴史 プロフィール

氏 名  小林 貴史(こばやし たかふみ)
現 職  ナカシマプロペラ株式会社 新規事業企画担当部長

学歴
平成8年3月 早稲田大学法学部卒業

職歴
19964月 日本開発銀行(現 株式会社日本政策投資銀行)入行、新規事業部配属
19974月 関西支店
199910月 都市開発部
20014月 産業技術部(現 企業金融第2部) 副調査役
20044月 事業再生部(現 企業ファイナンス部) 調査役
20069月 北陸支店 調査役
20084月 業務企画部 調査役
20135月 関西支店 課長
20166月 法務・コンプライアンス部 課長
20176月 業務企画部イノベーション推進室 課長
20206月 岡山事務所長
20227月ナカシマプロペラ株式会社 新規事業企画担当部長(現職)