森脇 大輔

日本政策投資銀行(以下、DBJ)の本支店で様々な投融資案件を担当しました。その中には、地域の鉄道事業者やバス事業者、PFI(Private Finance Initiative)による公共施設の民間委託なども含まれ、そうしたお客様の声を受け止めながら投融資に取り組んできました。

またDBJグループでは、都市交通を専門的に扱う投融資部門やシンクタンク部門もあり、自身の投融資経験に加えて、当行グループの調査研究成果やナレッジも活用しながら、当研究所アドバイザリー・ボード委員としての責務を果たしたいと考えています。

人々の生活・経済活動において「移動手段」は不可欠であり、地域公共交通は極めて重要な役割を果たしています。フランスでは「交通権」が基本的人権として定められ、ドイツ・イギリスでも、地域公共交通は「公共サービス(public service)」と位置付けられ、「公設民営」を基本として、資金面を含めて公的責任が明確化されています。

我が国の地域公共交通は、自家用車の普及や人口減少によって、輸送人員が減少しています。
また各事業者は、低採算路線の損失を高採算路線の利益で補う形で、事業エリア全体で安全且つ快適な運行サービスを担って来ましたが、乗合バス事業においては、規制緩和(参入・撤退制限の緩和、運賃設定の自由化)などにより高採算路線への新規参入が相次いだ結果、地方を中心に低採算路線の撤退・廃業を余儀なくされ、また現在でも地方乗合バス事業者の大半が赤字で、補助金なしにはサービスを維持できない状況にあります。

今後、一段の人口減少・高齢化社会を迎えるにあたり、相対的に公共交通の利用頻度の高い高齢者が増加する地域では、公共交通機関の果たす役割は一段と増すことでしょう。事業者においても、利用者(需要・売上)を起点に、サービス(供給・費用)を最適化させる努力が求められます。

具体的には、データ活用の精緻化を通じた、運行サービス(車両寸法・ルート・ダイヤ)の見直し(収益改善)や投資負荷軽減のための行政・事業者間の連携、路線維持が困難な地域では、コミュニティバス(行政等からの受託運行)などによる「移動手段」の確保により、生活の維持向上に資する取組が必要と考えます。

設立以来、当研究所では業界屈指の専門家メンバーにより国内外の先進事例の調査・研究やナレッジ提供が行われており、アドバイザリー・ボード委員として、地域公共交通の発展に向けて、共に取り組んでいきたいと考えています。

森脇 大輔 プロフィール

氏 名  森脇 大輔(もりわき だいすけ)
(株)日本政策投資銀行 岡山事務所 所長

略歴等
1998年4月 三井信託銀行 (現 三井 住友 信託銀行 )入行 難波支店 配属
2003年4月 同 横浜支店
以降、 法人業務推進部、 大阪 法人営業第二部、本店営業第三部を経て
2009年10月 日本政策投資銀行 入行 企業金融第1部 鉄鋼・機械班 調査役
2012年4月 関西支店 業務第一課 調査役・参事役
2015年7月 中国支店 業務 課長
2017年4月 経理部 資金業務 管理室長
2019年7月 女性起業サポートセンター 副センター長
2021年6月 中国支店 次長
2022年7月 岡山事務所 所長